インディーズ音楽レーベル Voltage of Imagination のブログ跡地です(2008/12/26 移転しました)


by ancient-colors

パトス・ハメ No.0001 : バックナンバーその1

冨田明宏 責任編集メールマガジン 『パトス・ハメ』
No.0001-1 / 2008年12月23日 発行



INDEX
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1. anNina 新作 natal を語るインタビュー(前編) text: 冨田明宏
2. anNina - natal 完成に寄せて text: 冨田明宏
3. 今号のパトス盤 - PICK UP DISC! - text: 冨田明宏
4. 犬が読むコラム - 責任編集後記的な何か - text: 冨田明宏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

b0020604_17353744.gif

■ 登録方法
subscribe@voltagenation.com
こちら宛に空メール(件名や本文を書かないメール)をお送りください。
# PC, 携帯どちらにも対応しております。

■ 解除方法
unsubscribe@voltagenation.com
こちら宛に空メール(件名や本文を書かないメール)をお送りください。

※ 空メールをお送りすると、登録完了のメールが返信されます。
※ 返信されない場合はこちらで手続きを行いますので
※ お手数ですが voltagenation@gmail.com までご連絡ください。





1. anNina 新作 natal を語るインタビュー(前編) text:冨田明宏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お待たせいたしました! anNina 初のオリジナル作品となるミニアルバム
natal、遂に発売です。『ひぐらし』関連楽曲では、濃厚な闇と切なさを描い
た2人。この natal では、さらにディープでノスタルジックな世界を紡ぎだし
た。モチロン、期待以上の完成度。僕たちはこれを待っていた!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

イメージは、ノスタルジックなものの中にある切なさ、悲しさ

―― 音源リリースが久しぶりですが、このミニアルバム制作まで、お2人はどのような活動を?

Annabel:
私は、binaria というユニットもやっているので、その活動ですね。

inazawa:
僕は……anNina に掛かりきりかなぁ。あと、Voltage of Imagination 関係のレコーディングとか、ミックスとか、エンジニア関係の仕事をいくつかやっていました。曲を作ったり弄ったりするのってどうしても時間がかかりますけども、歌い手さんは、作詞とレコーディング以外で作業にかかりっきりということはあまり無いと思います。だからかもしれないけど、みんなワリと他のユニットと掛け持ちしたりしているよね。

Annabel:
そうですね。

―― でも、それぞれの課外活動も anNina に影響を与えてきますよね?

inazawa:
それぞれが成長するなら何であれ良いですよね。僕は Voltage of Imagination 関係のお仕事の中から得られたものが anNina の制作に生きていますし、ちょっと友人に頼まれて引き受けた作業を済ませる中で自分なりに分かったことさえ、anNina に生きるわけです。そうして最近、やっと納得が出来る形で音が作れるようになってきまして……今回は、空気感までこだわったアルバムに出来るんじゃないかと思います。

――では、すでに手応えを感じている?

inazawa:
感じているけど、出来るだけ上を目指そうとすると、やっぱり時間との闘いになってきますよね。でも、しっかり納得のいく作品になると思います。

――以前のインタビューでは、「anNina は途轍もないダークさを志向するユニット」だと語っていましたが、志向性についての変化はありましたか?

inazawa:
あったかなと思います。もともとイメージしていた要素としては、そんなに変わらないんですけども。「対象 a」の時はかなり悲哀が前面に出ましたけど、今回はノスタルジィに向けた要素が表に出てきたという印象です。

ノスタルジックなものの中にある切なさ、悲しさみたいなものが、やはり自己表現として描きたい部分なのかなと……昔『ぼくらのうた』というアルバムを作りましたけど、感性としては通じる部分があります。

過去というものが、かけがえのない美しいものであるとした上で、現在の自分がその部分に触れたときにどう感じるか。癒しを感じるのか、悲しみや虚しさを感じるのか……その暗い方面を表現することにカタルシスのようなものもあります。

――それが、このミニアルバムのコンセプトですか?

Annabel:
そうですね。アルバム・タイトルの『natal』は、”故郷”という意味なんですよ。丁度アルバム制作を始める前くらいに、故郷のアルゼンチンに帰っていたんです。そこで感じたことが、歌詞の世界観に生きているはずです。

――2人とも育った国が違うわけですが、ノスタルジックに感じるものに、やっぱり違いはあるんですか?

Annabel:
私は子供の頃日本でも過ごしていたので、日本的なノスタルジィは分かると思うんですけど、やっぱりアルゼンチンにしかないものにもノスタルジィを感じるので、そこはイナザワさんには分からないところなのかもしれない。

inazawa:
むしろ、彼女は 2 つの国を行ったり来たりしていた特別な過去を持っているわけで、そこは今回かなり曲に反映されていると思いますよ。でも、決して僕ら個人のメモリアルを音源として出そうとしているわけではなくて、ひとつの作品世界を作り上げて、その空気に受け手の方が共感してもらえるようなものを作りたいな、と。

――なるほど。では、今回は特別な流れを持ったコンセプチュアルな作品というわけではなく?

Annabel:
そうですね。

inazawa:
アルバムに限ったコンセプトを提示するような作品ではないですね。anNina としてやりたいものを表そうという、名刺的な意味合いもあるので。

Annabel:
あとは、自分たちがやれることってなんだろう?という模索ですね。それが上手い具合に形になったなぁと。

inazawa:
今までは「ひぐらしのなく頃に解」関連の楽曲しか作ってなかったんですよね。だから、外から与えられる明確なコンセプトから離れた時、自分たちが一体どんな作品を作るのか、はじめは自分たちでも分からないわけですよ。だから、いろいろなことを実際に試しながら作ってきたって感じかな。

Annabel:
本当に、無茶させられましたよぉ。

――(笑)。

inazawa:
「これやってみようか?」という作業が多かったよね。

Annabel:
その場の思いつきでいうんですよ(笑)!

inazawa:
ユニット結成して、まだ黎明期なんで(笑)。そこから見えてきたものが、今後またいろいろな形で反映されていくんですよ。

――でも、お2人ともだいぶ肩の力が抜けてきたな、という印象ですよ。

inazawa:
確かにそうかもしれないですねぇ。なんだかんだで何曲もやってきていますからね。やっとユニットの勝手がわかってきたのかもしれない。

――「対象 a」では Interface さんが歌詞を書かれていましたが、今回は Annabel さんが書かれたんですね?

Annabel:
そうですね。

inazawa:
初めは何曲か彼に頼もうかと考えていたんです。ただ、ユニット内で有機的なやり取りをした結果、曲が生まれていくのにこしたことはないなと思うので、出来るところまではと Annabel さんと歌詞のやり取りをしていたら、全曲分できちゃったという感じですね。

――曲の制作は、今回完全にイナザワさんが?

inazawa:
Annabel さんが書いた曲もあるんですよ。ざっくりとしたオケを送ったら、メロディラインを付けて返してくれて、そのまま採用になったり。ユニットをやるからにはこういう作業がしたかったので、楽しいですね。一人では得られないアイデアを交換しながら、音楽を作るという。

Annabel:
だから仮歌も録れるように、イナザワさんの持っている機材を持ちかえったり、イナザワさんと同じマイクを買ったり、できる限り同じ環境でやれるように整えたんですよ。

――そうなると、宿題っぽくたくさん課題が出されたんじゃないですか?

Annabel:
本当に(笑)。まさに宿題という感じで、いろいろ持ち帰りましたね。どの曲も課題ばっかりで、最初はケンカしてました(笑)。か弱い乙女に対して、言いたい放題なんですよ!

inazawa:
か弱い乙女(笑)。いやいや、ケンカはしてないですよ!多分。とてもクリエイティヴな作業なので、やっぱり意見を戦わさないと分からないことは多いですから(笑)。まあそんなこんなを経て、今に到ります。

――興味深いお話でした(笑)。


※ 後編に続く


■ 関連リンク

anNina official site



2. anNina - natal 完成に寄せて text:冨田明宏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

さあ、どこから語ってやろうか。なぜこのオッサンは逡巡しているのかと言えば、褒めるところが見つからずに困っているから、の逆。褒めるところばかりで、褒めてばかりではどうにもウソ臭くなってしまうからである。

言わされてる?冨田はそんな男ではありません(by●とホップ)。でも確かに、「パトス・ハメ」自体 VOI ベースの媒体だもの、そう思われても無理はない。ということで、さっき書いた原稿は一度破棄した。あまりにも感情が籠り過ぎたからだ。これから書く原稿はできる限り俯瞰することを心がけるが、どうにも溢れるパトス成分は不可抗力として穏便に処理されたし。


この狂おしい世界観へと到る導入部分、ピアノ、ストリングスの旋律が囁き語るような「inicial」の蟲惑的な美しさからして、もう言葉による解釈を脱してしまったかのような説得力がある。語れない、聴け。の一言に尽きるのだが、それではこのメルマガのコンセプト自体がいきなり死滅するので、続ける。

心の底に眠る琥珀色の思い出を見つけてくれるような、繊細な音の連なり。そこで発見するのは、聴き手それぞれのノスタルジックな郷愁感だ。一音に次ぐ一声によって、今度は「子午線」のメロディが綴られる。夕暮れ、揺れるオレンジ色、彼方より迫る闇。そんな景色を見せながら、音の機微ひとつひとつが、心のヒダに別け入るように侵入する。Annabel の歌声で、琴線が優しくなでられていくのがわかるだろう。

気付けば、すっかり心捕らわれているのである。まるで宵闇へと移ろうように、「うわのそら」へと到る景色。溜息のように吐き出される歌声と、空間に適度な余白を残しながら色を付けていくサウンド。その余白は、聴き手の想像力で色を置く為のものだ。湿り気を帯びた空気、その重さを感じるようなムードが漂う。

そして、この「natal」のハイライトだと勝手に思っている「肥えた太陽」。切迫感と焦燥感がヒタヒタと迫る。鼓動を圧迫するビートと言葉。吐くように歌われた言葉は驚くほど性急で、スリリングな物語が目まぐるしく展開されていく。聴いてからしばらく後、そういえばピンク・フロイドの曲に「デブでよろよろの太陽」という邦題が付けられた曲があったことを思い出した。

「目蓋」では一転二転して、ヒラヒラと夢の水底に落ちて行く。ファンタジックな光景が眼前一杯に広がり、眩しいほどに懐かしい光に溢れる。何故、人の奏でた音楽に懐かしさを感じるのだろうか。わからない。わからないが執拗に、bermei.inazawa はそういう音を意図的に配置する。

ノイズ一音にしてもそうだ。そういう計算が綿密にされている音楽なのだ、anNina は。夢の水底かと思っていた景色は、実は海の水底でもあったようで、「シメオンの海」へとさらわれるように運ばれていく。幻想的なサウンド・プロダクションから徐々に壮大さが増していくストリングス。鍵盤の規則的な響きには催眠効果もあるようだ。叙情的な歌に聴き入る間を充分にとり、爆ぜるような勢いで音が重層的に重なり合い、クライマックスへと到る。

ラストは、「対象 a(adonde vuelvo)」。(adonde vuelvo) の意味は知らんので今度 anNina に聞こうと思っているのだが、この拍の取り方、明らかに通常と違うどころか、奇妙な空気感のズレを生み、音とメロディにモワレ状の波紋が広がっている。この昂揚感はなんだろうか。眩暈が眩暈を呼ぶような、奇妙な感覚である。


「natal」を思い切り堪能した。なんて深みのある、幅のある音楽だろうか。一聴だけでは計り知れないこの魅力。伝えるのにこれだけの文字を要してしまった。しかも、まだ歌詞については全然語れてない。一体どうしたことなんだろう。ちょっと怖いな、anNina は。

とにかく、この「natal」は 2008 年を代表する 1 枚だ。本年リリースされた日本人アーティストでは、石橋英子の『drifting devil』、ウリチパン郡の『ジャイアント・クラブ』に比肩する前衛性と深みとポップなエッセンスを持った作品だ。もしまだ「natal」を聴いていない人が周りにいるのなら、ぜひこの長ったらしいレビューと共に、アナタの情熱でもって宣伝して欲しい。この作品には、その情熱をかける価値が絶対にある。


■ 紹介されたアルバム一覧 (amazon へのリンク)

natal / anNina
ジャイアント・クラブ / ウリチパン郡
drifting devil / 石橋英子 ほか
Atom Heart Mother / Pink Floyd


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
音楽ライター冨田明宏
責任編集メールマガジン「パトス・ハメ」


メールマガジンの登録・解除
【登録】subscribe@voltagenation.com
【解除】unsubscribe@voltagenation.com
※件名、本文に何も書かずにメールをお送りください。

ご意見やご感想はこちら
magazine@voltagenation.com

発行 : Voltage of Imagination
http://www.voltagenation.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright(C) Voltage of Imagination. All rights reserved.
[PR]
by ancient-colors | 2008-12-23 17:33 | パトス・ハメ